2019年3月1日から始まった通常営業最初の企画展「亥展」も残りわずかとなりました。昨年「戌展」を開催した時から、(次はイノシシだな)と考え、一年かけて考えていた「亥展」でしたが、秋保地区での近年の猪被害の急増や、地域の活性化のプロジェクトに参加する機会もあり、一歩踏み込んだ内容の展示になったのではないか、と考えます。とりわけ地域の方々との連携をとることが出来たことは、佐々木美術館が地域に根差す文化施設になっていくこと、その目標が一歩進んだ気がします。
今回の展示では、展示室に木を持ち込み小さな森を作り、アート作品の展示とドキュメントの掲示、上映を行いました。どんな作品が集まるのか未知数な中での準備作業は、もともと動物が好きなこともあり、非常に楽しいものでした。
集まった作品はどれも個性輝く力作ぞろいで、有り難うございました。作品を募集する際のテーマは「猪・森・里山」。皆さんそれぞれの解釈で作品を作ってくれました。そこに、「イノシシの頭骨標本」や「鳥の羽の標本」といった自由研究の作品などが加わり、素敵な森が完成しました。
ドキュメントの映像ではイノシシの被害の現状から捕獲、止め刺し、解体という映像を収めました。当初の目標であった、捕まえたイノシシを自分でさばいてみんなでその肉を頂く、という目標は惜しくも達成できませんでしたが、かなり近づけたのではないかと思います。そして3/23(土)「猪・森・里山を語り、いただく」ではその肉を美味しくいただくことが出来ました。まだまだ宮城県で害獣を食べていく、までの道のりは高いハードルがありますが、考えていく必要があるのではないでしょうか。
「猪・森・里山を語り、いただく」の第一部のディスカッションでは、<緑を守り育てる宮城県連絡会議>の事務局長である、佐藤修氏から、里山で何が起きているのか、これからどうしていくべきか、獣と人との歴史や文化、など様々な観点から素晴らしい話を聞くことが出来ました。「人間の足跡が森の肥しだ。」という言葉を聞きました。森を野放しにすることは決して木々や獣のために良いことにはならない、人が手を入れて森が健全に育つことができる。過去に植えた木々が今伐期を迎えているが、海外からの安い木材の利用が増えたり、燃料として使われなくなったりで伐採されずに弱ってきていることや、山間部の過疎化などにより里山を整備する人材が不足していることなど、現在の里山の状況は思わしくないようです。人の手が入らなくなり、薮化してしまうと、獣たちの格好の隠れ家となり、集落に近づいていることは住んでいて強く感じます。
秋保地区でも近年イノシシ被害対策として、防護柵の設置や地域ぐるみで箱罠を設置するなど、対策を行ってきましたが、2年程は効果があってもなかなかイノシシ被害を少なくするまでには至っていないようです。
ジビエとして食べていくには放射線量の問題があり、捕獲しても解体施設の不足など、問題はまだまだ山の様にあります。根本的に何かを変えて考えていくことが必要になるのかもしれません。
今年の干支のイノシシ。考えるきっかけとなれば幸いであります。