秋保の杜 佐々木美術館&人形館 10周年リレー展
青野文昭 展
彷徨う欲動―幽霊船―地球の裏側から帰還した人々1613-2023
(慶長遣欧使節―サン・ファン・バウティスタ号(模型)の廃材から)
2023年8月16日(水)〜9月10日(日)
10:00〜17:00
月曜休館(祝日は営業 翌日休)
美術館1階展示室
昔から今日まで、世界の端っこに浮かぶこの極東の島国日本では、つねに世界的・地球的とも言える大波が、水平線の彼方から一気にやってくるのを常としている。大陸の文明も仏教も黒船も黒潮や台風、そして津波まで。同時に、そのリアクションとして、こちらから水平線の彼方へ向かい挑む様に多くの人々が旅立っていった。遣隋使や遣唐使から近代の欧米留学、現代企業の国際進出やグローバル化まで、そのつど私たちは、自らのバックボーンを否定し変革を余儀なくされてきた。
慶長遣欧使節(1613年)における伊達政宗・支倉常長は、その最も際立った―その試みがほぼ完全な不発に終わったことにもより(反転の反転)―象徴的なものであったと言える。日本が置かれた運命的な立場を具現し、日本人の分裂してしまいかねない彷徨える魂そのものであって、文字通り世界の裏側から自らを見つめ、グローバルとローカルに引き裂かれた、最初の近代日本人であったかもしれない。
*今回のこころみは、東日本大震災の津波による被害で破棄された、石巻のサン・ファン・バウティスタ号(1613年の「慶長遣欧使節」を記念して再現された船の模型)の廃材を、旧石巻女子高OGを中心とする有志の団体から譲り受け、その思いを託されたことに端を発している。自分の母も石巻女子高出身だったということもあり、またこの廃材となった大量の材木が、自分の生まれ育った宮城県内の森林から切り出されたものであり、そして、この佐々木美術館のある秋保の近くに支倉常長ゆかりの「支倉台」という地域もあり、様々な因縁を感じながら、なんとか新しい形にして、痕跡を残していきたいと思った。
青野文昭
青野文昭 Aono Fumiaki
略歴
1968 仙台生まれ、
1992国立大学法人宮城教育大学大学院美術教育科終了
2005宮城県芸術選奨(彫刻)
2013ヴァーモントスタジオセンターフェローシップ
2015(Vermont Studio Center Fellowships for Artists and Writers アメリカ・VSC)
公益信託タカシマヤ文化基金・第26回タカシマヤ美術賞受賞
主な展覧会
1997年「なおす・無縁-有縁」宮城県美術館県民ギャラリー(仙台)
2000年「アートみやぎ」 宮城県美術館(宮城)
2007年「N.E.blood21 Vol.28 青野文昭」 (リアスアーク美術館、宮城・気仙沼)
2008年「いのちの法則・生をひもとくための三つの書」(足利市立美術館、栃木・足利)
2010年「路上・修復・ライブ―映像記録№1上映―」ONWARD SQUARE(仙台)
2012年「どくろ杯・Ⅱ―他者性と不可避性について―」ギャラリーターンアラウンド(仙台)
2013年「あいちトリエンナーレ2013―揺れる大地―われわれはどこに立っているのか―場所、記憶、そして復活」(愛知県名古屋市ほか)
2015年「パランプセスト―記憶の重ね書き」gallery αM (東京)
2016年「いま、被災地から -岩手・宮城・福島と震災復興-」展(東京藝術大学美術館)
「Royal Academy of Arts’ Summer Exhibition.2016.」(Royal Academy ロンドン )
2017年「コンサベーション_ピース ここからむこうへpartA青野文昭展」武蔵野市立吉祥寺美術館(東京) 「コンニチハ技術トシテノ美術」 せんだいメディアテイク(仙台)
2019年「六本木クロッシング2019:つないでみる」 森美術館(東京)
「青野文昭 ものの,ねむり,越路山,こえ」せんだいメディアテーク(仙台)
2020年「ヨコハマトリエンナーレ2020 AFTERGLOW-光の破片をつかまえる」横浜美術館他(横浜)
「山形ビエンナーレ 2020 現代山形考 藻が湖伝説」東北芸術工科大学内など(山形)
2022年 個展「どこから来てどこへ向かうのか」(東京)上野の森美術館ギャラリー(VOCA2022関連)
「Eternally Yours 」 Somerset House (ロンドン)
「地球がまわる音を聴く:パンデミック以降のウェルビーイング」森美術館(東京)
主な収蔵先
宮城県立美術館、愛知県立美術館、金沢21世紀美術館、森美術館、アラリオ・ミュージアム(韓国)、リアスアーク美術館、町田市立国際版画美術館、高島屋、Luciano Benetton Collection(Imago Munm)、KOO HOUSE MUSEUM of ART&DESIGN COLLECTION(韓国)